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【2026年版】安倍晴明を深く知るためのおすすめ本10選|漫画・小説・歴史書を網羅

ファンタジー系
漫画★全巻ドットコム
  1. 序章:現代社会の「闇」と共鳴する、2026年の安倍晴明
    1. なぜ今、30代以上の社会人が「陰陽師」に惹かれるのか
    2. 本レポートの目的と独自性
  2. 第1章:【漫画編】視覚化される「呪(しゅ)」と「美」の系譜
    1. 1. 『陰陽師・安倍晴明』(漫画:川端新/原作:結城光流)
      1. 作品データと2026年における評価
      2. 【深層分析】「弱さ」を持つヒーローとしての晴明
      3. 【ネタバレ全開】橘若菜と「冥(くら)がり」の物語
      4. 完結巻(第9巻)が描く「救済」の形
    2. 2. 『陰陽師』(漫画:岡野玲子/原作:夢枕獏)
      1. 作品の立ち位置
      2. 「30代以上の大人」だからこそ味わえる凄み
  3. 第2章:【小説編】言葉で紡がれる「闇」と平安の論理
    1. 3. 『陰陽師』シリーズ(著者:夢枕獏)
      1. 現代陰陽師ブームの「原点」にして「頂点」
      2. 「名づけること」の本質
      3. 源博雅という「錨(いかり)」
    2. 4. 『少年陰陽師』シリーズ(著者:結城光流)
      1. 世代を超えた継承の物語
      2. 組織論としての「十二神将」
    3. 5. 『妖異幻怪 陰陽師・安倍晴明トリビュート』(編:文藝春秋)
      1. 多様な解釈の万華鏡
  4. 第3章:【歴史書・学術書編】虚構を剥ぎ取り、実像に迫る
    1. 6. 『平安貴族と陰陽師―安倍晴明の歴史民俗学』(著:繁田信一)
      1. テクノクラート・晴明の肖像
      2. 名もなき陰陽師たちの現実
    2. 7. 『陰陽道と平安京 安倍晴明の世界』(著:川合章子)
      1. 平安京という巨大な呪術装置
    3. 8. 『平安時代陰陽道史研究』(著:山下克明)
      1. 陰陽道の「技術体系」を解明する
    4. 9. 『陰陽師たちの日本史』(著:斎藤英喜)
      1. メタ視点で見る晴明像の変遷
    5. 10. 『陰陽師の日本史』(監修:加門七海)
      1. 実践者の視点を含むユニークな入門書
  5. 第4章:【深層分析】晴明をめぐる3つのキーワード
    1. キーワード1:【式神と十二神将】~自律する「力」とAI~
    2. キーワード2:【狐の子説】~異端の血脈とマイノリティ~
    3. キーワード3:【呪いと政治】~システムとしての呪術~
  6. 結章:我々は晴明に何を求めているのか
    1. 【付録】2026年版 安倍晴明 必読ブックリスト一覧
      1. 引用文献

なぜ今、30代以上の社会人が「陰陽師」に惹かれるのか

2026年現在、平安時代の陰陽師・安倍晴明を取り巻く文化的熱狂は、単なる歴史ブームやキャラクター人気の枠を超え、一種の社会現象として定着しつつある。特に30代以上の社会人層——日々組織の論理に揉まれ、不可視のストレスや人間関係の軋轢(現代の「呪」)に晒されている層——にとって、安倍晴明という存在は、特別なカタルシスをもたらすアイコンとなっている。

かつて映画『陰陽師0』が公開された際、若き晴明が「事実」と「真実」を見極め、目に見えるものだけで判断される世界に抗う姿が描かれた 1。このテーマ性は、フェイクニュースやAIによる生成情報が氾濫する2026年の情報社会において、より切実な響きを持って受け入れられている。フィギュアスケートの羽生結弦選手の演技からインスピレーションを受けたという「重力を感じさせないアクション」 1 が象徴するように、晴明は物理的な制約のみならず、社会的なしがらみや既成概念からも軽やかに逸脱する存在として認識されているのだ。

本レポートの目的と独自性

本レポートでは、アニメやファンタジー作品に親しみ、物語の構造やキャラクターの心理描写を深く味わうリテラシーを持った大人の読者に向けて、安倍晴明を「深く」知るための10冊を厳選した。

単なるブックリストではなく、各作品が提示する晴明像を比較文化的に分析し、以下の3つの視点から詳細な解説を行う。

  1. 【漫画】:不可視の「呪術」をいかに視覚化し、エンターテインメントとして昇華させているか。
  2. 【小説】:言葉によって紡がれる「闇」と、平安の論理がいかに現代人の心性に訴えかけるか。
  3. 【歴史書】:虚構のヴェールを剥ぎ取った時、そこに現れる「技術官僚(テクノクラート)」としての実像。

なお、本記事では作品の魅力を深層まで掘り下げるため、物語の核心に触れる「ネタバレ」を含む詳細な分析を行う。これは未読の楽しみを奪うものではなく、むしろ大人の読書体験として、伏線や哲学的テーマをより深く理解するための「水先案内」となるよう設計されている。

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陰陽師・安倍晴明 (1-9巻 全巻)

漫画というメディアは、本来目に見えない「気」や「霊」、「呪術」を可視化するという点で、陰陽師物語において極めて重要な役割を果たしてきた。ここでは、対照的なアプローチで晴明を描いた決定版とも言える2作品を紹介する。

1. 『陰陽師・安倍晴明』(漫画:川端新/原作:結城光流)

〜完結を迎えた「人間・晴明」の成長と、愛ゆえの苦悩〜

作品データと2026年における評価

2024年10月に第9巻をもって完結した本作 3 は、累計550万部を超える『少年陰陽師』の著者・結城光流と、美麗な作画で知られる川端新のタッグによる「平安あやかし絵巻」である 4。月刊プリンセスでの連載という出自もあり、女性読者層を意識した繊細な心理描写が特徴だが、その本質は「半人半妖」の孤独な青年が、自己のアイデンティティを確立していく骨太なビルドゥングスロマン(成長譚)である。

【深層分析】「弱さ」を持つヒーローとしての晴明

従来の晴明像(例えば夢枕獏版の、達観した中年男性像)とは異なり、本作の晴明は「人間くさい」 5。彼は人間と妖(あやかし)の間に生まれた「半人半妖」であり、その血の宿命に苦しみ、体力的な限界や精神的な迷いを露呈する。 特に30代以上の読者が共感するのは、彼が絶対的な支配者として十二神将を従えるのではなく、**「対話と信頼」**を通じて彼らとの関係を構築していくプロセスである。

  • 青龍(せいりゅう)との確執と和解: 十二神将の一人である青龍は、当初晴明に対して懐疑的であり、反発する。第2巻で描かれる彼らの「出会い」と契約のエピソードは、組織における上司と部下、あるいはプロジェクトチーム内の信頼醸成のメタファーとして読むことも可能だ 5
  • 謎の術師への貸与: 物語中盤、晴明は謎の男の要求により、青龍の力を貸し出す決断を下す。その結果、青龍が危機に陥る展開は、リーダーとしての「決断の責任」と「他者を信じることのリスク」を鋭く問いかける 5

【ネタバレ全開】橘若菜と「冥(くら)がり」の物語

本作のドラマツルギーの中核を成すのは、見鬼の才(霊視能力)を持つ姫・橘若菜(たちばなわかな)との関係性である 5

  • 共依存ではない「個」の尊重: 若菜は霊的な闇である「冥がり(くらがり)」に囚われる運命にある。彼女は晴明を巻き込むまいと「道連れにはしたくない」と願い、晴明は「共に堕ちても構わない」というほどの激しい情動を見せる 6。この相互の自己犠牲の精神は、安易な恋愛劇を超えた、魂レベルでの結びつきを描いている。
  • 視覚的ハイライト: 特に第3巻から第4巻にかけての「過去編」では、冥がりの底に咲く「華(あやかし)」の禍々しい美しさと、そこから若菜を救い出そうとする晴明の姿が、絵巻物のような圧倒的な密度で描かれている 6

完結巻(第9巻)が描く「救済」の形

2024年に発売された最終巻(第9巻)では、物語は鍛冶師の息子・巧馬(たくま)と伝説の妖怪「鵺(ぬえ)」を巡るエピソードで幕を閉じる 5

  • 黒光りする大刀の謎: 巧馬が持ち込んだ大刀は、人の業と呪いが凝縮された呪物である。晴明はこの「モノ」に残された因縁を解き明かすために奔走する。
  • 鵺との決着: 晴明は、力による一方的な退治(Exorcism)ではなく、その存在の悲しみを理解し、あるべき場所へと還す「鎮魂(Requiem)」によって事態を解決する。この「理解と受容」による解決こそが、川端・結城版晴明の到達点であり、分断の進む現代社会において最も必要とされるリーダーシップの形と言えるだろう。書き下ろし漫画で見せる「ほっこり」とした日常の風景は、激闘を生き抜いた者たちへの祝福である 7

項目

詳細情報

著者

漫画:川端新 / 原作:結城光流

巻数

全9巻(完結) 3

掲載誌

月刊プリンセス(秋田書店)

特徴

繊細な心理描写、十二神将との絆、恋愛要素、成長譚

おすすめ読者

組織での人間関係に悩む人、感情移入型の読書を好む人

2. 『陰陽師』(漫画:岡野玲子/原作:夢枕獏)

〜「能」的静寂と「知」の極致〜

作品の立ち位置

紹介リストの2冊目は、漫画史における記念碑的作品である岡野玲子版『陰陽師』だ。夢枕獏の原作をベースにしつつも、中盤からは独自のオカルト解釈と深遠な宇宙観が展開され、原作とは異なる「もう一つの正史」としての地位を確立している。

「30代以上の大人」だからこそ味わえる凄み

  • 徹底的な有職故実: 衣装の重ね(襲の色目)、寝殿造の構造、調度品の意匠に至るまで、平安時代の物質文化が学術的レベルで再現されている。これは単なる背景ではなく、当時の「空気感」を醸成するための必須要素として機能している。
  • 「能」の表現技法: 岡野版の最大の特徴は、キャラクターの表情における「引き算」の美学だ。感情を露わにするアニメ的な表現を排し、能面のように静謐な表情の中に、激しい情念や霊的な力の流動を描き出す。この高度な表現は、人生経験を積んだ大人の読解力を心地よく刺激する。
  • 雨乞いと変性意識: 特に「雨乞い」のシーンなどで描かれる、晴明がトランス状態(変性意識状態)に入り、宇宙のリズムと同期していく描写は圧巻である。ここでは呪術が「魔法」ではなく、高度な「精神技術」として描かれており、現代のマインドフルネスや瞑想に関心のある層にも通じるテーマ性がある。
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漫画が視覚で魅せるならば、小説は言葉によって読者の脳内に無限の平安京を構築する。ここでは、現代の安倍晴明イメージを決定づけた金字塔的シリーズと、新たな視点を提供する関連作品を紹介する。

3. 『陰陽師』シリーズ(著者:夢枕獏)

〜「呪(しゅ)」の哲学と究極のバディ関係〜

現代陰陽師ブームの「原点」にして「頂点」

1986年の初出以来、長きにわたり書き継がれている本シリーズは、2026年の現在においても色褪せることのない輝きを放っている 8。映画『陰陽師0』の原作としても再注目されたが、小説版には映画では描ききれない哲学的な深みがある。

「名づけること」の本質

「この世のことは、すべて呪(しゅ)なのだよ」

晴明が相棒の源博雅に語るこの有名なセリフは、現代の記号論や認知心理学にも通じる深い洞察を含んでいる。

  • 名前と支配: 「名前」をつけることで、不定形の事象が固定され、支配可能になる。これは現代のビジネスにおける「言語化」「定義付け」の重要性ともリンクする。
  • 認識と現実: 人が認識して初めて世界が存在するという世界観は、量子力学的な示唆にも富んでおり、知的好奇心の強い30代以上の読者を飽きさせない。

源博雅という「錨(いかり)」

本シリーズが長く愛される最大の理由は、晴明と博雅の関係性にある。浮世離れした天才・晴明に対し、博雅は「いい漢(おとこ)」として描かれる。彼は実直で、嘘がつけず、笛の名手である。 博雅は、人外の領域に近づきすぎる晴明を、現世の人間の側に繋ぎ止める「錨」の役割を果たしている。二人が縁側で酒を酌み交わし、「行こうか」「うむ、行こう」と阿吽の呼吸で怪異の現場へ向かう様式美は、孤独な現代人が憧れる究極の「信頼関係」の形である 1

4. 『少年陰陽師』シリーズ(著者:結城光流)

〜「孫」の視点から逆照射される「祖父」の偉大さ〜

世代を超えた継承の物語

漫画『陰陽師・安倍晴明』の原作者でもある結城光流の代表作。主人公は晴明の孫・安倍昌浩(まさひろ)だが、本作を「大人のための晴明本」として推す理由は、「偉大すぎる祖父(権威)」といかに向き合うかというテーマにある 9

組織論としての「十二神将」

本作の最大の発明は、十二神将を個性豊かなキャラクターとして再定義した点だ。

  • 紅蓮(ぐれん/騰蛇): 凶将として恐れられながらも、晴明(そして孫の昌浩)に絶対の忠誠を誓う。
  • マネジメントの視点: 老獪な晴明は、時に孫を試すような課題を与え、十二神将たちを巧みに配置して孫の成長を促す。この「見守りつつ、あえて修羅場を与える」育成スタイルは、部下を持つようになった30代以上の読者にとって、理想的なメンター像として映るだろう。

5. 『妖異幻怪 陰陽師・安倍晴明トリビュート』(編:文藝春秋)

〜現代の実力派作家たちが競作する「私の晴明」〜

多様な解釈の万華鏡

夢枕獏以外の作家が安倍晴明を描いたらどうなるか。その問いに答えるのがこの豪華なアンソロジーである 8

  • 参加作家: 蝉谷めぐ実、谷津矢車、上田早夕里、武川佑など、現代の歴史・時代小説界を牽引する作家が集結している。
  • 読みどころ: 各作家が自身の得意とするフィールド(ミステリ、ホラー、人情劇)に晴明を引き込み、従来のイメージを踏襲しつつも、全く新しい側面を切り出している。
  • ある作品では冷徹な政治家として。
  • ある作品では苦悩する科学者として。
  • ある作品では情に厚い隣人として。
    一つの固定されたイメージではなく、万華鏡のように変化する晴明像を楽しむことができる本書は、「歴史上の人物はいかようにでも解釈可能である」というフィクションの醍醐味を教えてくれる。
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エンターテインメント作品で「晴明」のイメージを堪能した後は、史実という冷徹なメスでその実像を解剖する知的冒険へと誘いたい。ここでは、最新の研究成果に基づき、ファンタジーの背後にある「リアルなシステム」を解き明かす5冊を紹介する。

6. 『平安貴族と陰陽師―安倍晴明の歴史民俗学』(著:繁田信一)

〜「魔法使い」ではない、公務員としての日常〜

テクノクラート・晴明の肖像

繁田信一氏は、史料に基づき冷徹に晴明の実像に迫る研究者である。本書 10 において提示される晴明像は、派手な術で妖怪を退治するスーパーヒーローではない。彼はあくまで「陰陽寮」という役所に勤める**公務員(技術官僚)**である。

  • 日々の業務: 彼が行っていたのは、天文観測による異変の察知、暦の作成、そして貴族たちの依頼による吉凶判断(占い)や、病気平癒のための祭祀(反閇など)である。これらは当時の最先端科学であり、医療行為でもあった。
  • 出世のリアリティ: 晴明が出世したのは、超能力があったからではない。彼が当時の最高権力者(藤原道長など)の意向を巧みに読み取り、政治的な駆け引きの中で「呪術的権威」を利用して彼らをサポートしたからである。この「社内政治」的なスキルと処世術で成り上がっていく晴明の姿は、現代の組織人にとって非常に生々しく、かつ参考になる視点である。

名もなき陰陽師たちの現実

本書では、晴明のようなエリートだけでなく、歴史の闇に埋もれた無名の法師陰陽師たちの姿も描かれる。彼らが生活のためにどのような呪術を行い、時には「呪詛(人を呪うこと)」さえ請け負っていたのか。そのドロドロとした生活実態は、華やかなフィクションの世界とは一線を画す衝撃を持っている。

7. 『陰陽道と平安京 安倍晴明の世界』(著:川合章子)

〜都市防衛システムとしての呪術〜

平安京という巨大な呪術装置

本書 12 は、平安京という都市そのものを呪術的な防衛システムとして捉え、そのオペレーターとして晴明を位置づける。

  • 四神相応: 青龍・白虎・朱雀・玄武という四神に守られた平安京の都市計画の意味。
  • 鬼門と裏鬼門: 都の北東(鬼門)と南西(裏鬼門)に配置された寺社や結界の役割。
  • 「穢れ」の管理: 当時の人々が極端に恐れた「穢れ(死や出産など)」を、陰陽師がいかにして祓い、都市の清浄を保とうとしたか。
    これらの知識を得ることで、漫画や小説で描かれる「結界を張る」「都を守る」という行為が、具体的にどのような地理的・行政的意味を持っていたのかが立体的に理解できるようになる。京都旅行の際の知的ガイドブックとしても最適である。

8. 『平安時代陰陽道史研究』(著:山下克明)

〜アカデミズムの最高峰から見るシステム〜

陰陽道の「技術体系」を解明する

より本格的な学術書に挑戦したい読者には、山下克明氏の著作が必読である 13。本書は、陰陽道が単なる迷信ではなく、仏教や神祇信仰と並ぶ**「国家的な宗教・技術システム」**として、いかに成立し展開していったかを論じている。

  • 技術としての陰陽道: 天文観測技術や、中国から伝来した最新の科学知識がいかにして日本独自の「陰陽道」へと変質(日本化)したか。
  • 晴明の信仰: 晴明自身が何を信じ、どのような神々(泰山府君など)を祀っていたのか。
    フィクションで描かれる「泰山府君祭(死者蘇生の術)」などの背後にある、論理的な儀礼体系と歴史的変遷を理解するための、まさに「ネタ本」としての最高峰である。

9. 『陰陽師たちの日本史』(著:斎藤英喜)

〜「晴明」はいかにして創られたか〜

メタ視点で見る晴明像の変遷

斎藤英喜氏は、陰陽道を「物語」や「言説」の側面から分析する第一人者である。本書 15 の面白さは、「実在の晴明」と「物語の中の晴明」のギャップそのものを歴史として扱っている点にある。

  • 中世の説話: 『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』で語られる、飄々とした老人としての晴明。ここでは彼は「なんでも知っている不思議な老人」である。
  • 江戸のエンタメ: 浄瑠璃や歌舞伎(『芦屋道満大内鑑』など)で描かれる、劇的な出生の秘密(狐の子)を持つ悲劇のヒーローとしての晴明。ここで「母への思慕」という情緒的な要素が付加される。
  • 現代の復活: 明治維新による「迷信」としての弾圧を経て、現代のブームに至るまでのプロセス。
    「なぜ晴明は美形キャラになったのか?」「なぜ母は狐なのか?」といった素朴な疑問に対し、歴史社会学的な回答を与えてくれる一冊である。

10. 『陰陽師の日本史』(監修:加門七海)

〜オカルトと歴史の幸福な婚姻〜

実践者の視点を含むユニークな入門書

作家であり、自身も深いオカルト知識と実践経験を持つ加門七海氏が監修・執筆に関わった本書 17 は、歴史書でありながら、どこか「あちら側(呪術的感覚)」の匂いを漂わせている。

  • 権力者と闇: 藤原道長から徳川家康まで、時の権力者たちがいかに陰陽師の「闇の力」を頼り、また恐れたかを描く。
  • 現代への接続: 陰陽道が現代の日本の風習(年中行事、厄払いなど)にどう生きているかを解説しており、読者の日常生活と晴明の世界を地続きにしてくれる。
    専門書ほど堅苦しくなく、かつ内容はマニアックであるため、歴史初心者からディープなファンまで幅広く楽しめる良書である。
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これら10冊を読み解く上で、補助線となる3つの重要なキーワードについて解説する。これらを意識して読むことで、各作品の解像度は飛躍的に高まるはずだ。

キーワード1:【式神と十二神将】~自律する「力」とAI~

漫画『陰陽師・安倍晴明』や小説『少年陰陽師』で活躍する「十二神将」 19。本来、歴史的な陰陽道における「式神(しきがみ)」は、陰陽師が使役する鬼神や精霊の総称であり、紙人形(形代)などに憑依させて使う、どちらかと言えば「道具」に近い存在であった。 しかし、現代のフィクションにおいては、これらは**「人格を持ったパートナー」**として描かれることが多い。

  • 2026年的解釈: この「人間ではないが、高い知能と力を持ち、パートナーとして機能する存在」は、現代における生成AIや高度なボットとの関係性に酷似している。
  • 制御のパラドックス: 十二神将最強の「騰蛇(紅蓮)」が、その強力さゆえに暴走の危険性を孕んでいる(『少年陰陽師』など)という設定は、AIの制御問題(アライメント問題)とも共鳴する。「力」をいかに制御し、共存するかというテーマは、平安ファンタジーの皮を被った現代的課題なのだ。

キーワード2:【狐の子説】~異端の血脈とマイノリティ~

「安倍晴明の母親は信太の森の白狐(葛の葉)である」という伝説(信太妻伝説)は、歌舞伎などを通じて江戸時代に定着した 21

  • 差別と畏敬: この「異類婚姻譚」は、晴明の超人性(人にはない力)を説明すると同時に、彼が「完全な人間ではない」「異端」として社会の周縁に置かれる存在であることも示唆している。
  • 川端版漫画での解釈: 漫画『陰陽師・安倍晴明』では、この「化生(けしょう)の血」こそが晴明の力の源泉であり、同時に孤独の源として描かれる 5。彼はその血ゆえに差別され、同時にその力ゆえに頼られる。
  • 史実の視点: 一方、歴史書では彼の実際の系譜(下級貴族からの成り上がり)が示される。なぜ「狐の子」というレッテルが必要だったのか。それは、当時の貴族社会において、実力だけで成り上がった彼に対する嫉妬や畏怖が、「あいつは人間ではない(だから特別なんだ)」という納得の仕方を求めた結果かもしれない。これは現代社会における「突出した才能への嫉妬と排除」のメカニズムとも通底する。

キーワード3:【呪いと政治】~システムとしての呪術~

『陰陽師0』や各種小説で描かれる「呪い」の応酬。これは単なるファンタジーバトルではなく、平安時代の**「政治闘争」のメタファー**である。

  • 政敵の排除: 菅原道真の祟りに代表されるように、政敵を失脚させたり、不審死させたりする際に、「呪い」は合理的な説明原理として機能した。
  • 陰陽師の役割: 陰陽師は、この「呪い」を認定し、対策を講じることで、政治的な決定権に関与した。つまり、陰陽師は「霊的コンサルタント」あるいは「情報将校」として、権力構造の核心に食い込んでいたのである。
  • 現代への応用: この視点で『平安貴族と陰陽師』などを読むと、晴明の行動が極めて政治的な計算に基づいていたことが見えてくる。現代のビジネスにおいても、「風評」や「ブランドイメージ」という名の「呪い」をいかにコントロールするかは、企業の死活問題である。晴明の仕事は、現代の危機管理広報(リスクマネジメント)の先駆けとも言える。
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ここまで紹介してきた10冊の本、そして漫画や小説が描く安倍晴明の姿を通じて見えてくるのは、**「境界に立つ者(マージナル・マン)」**としての晴明の魅力である。

彼は、人間と妖怪、都の光と闇、科学(天文学)と魔術、生と死、それらの境界線上に立ち、どちらの世界にも属しながら、どちらの世界も俯瞰している。

現代の30代以上の社会人もまた、理想と現実、仕事と私生活、デジタルの効率性とアナログな感情、組織の論理と個人の倫理、そうした様々な境界線上でバランスを取りながら生きている。

だからこそ、我々は晴明に惹かれるのだ。

彼のように、清濁を併せ呑み、不可解な運命(呪)さえも解き明かし、涼しい顔で「行こうか」と歩き出す強さに憧れるのだ。

今回紹介した書籍を手に取ることは、単なる暇つぶしではない。それは、現代という混沌とした「百鬼夜行」の時代を生き抜くための、精神的な「護符」を手に入れる行為に他ならない。まずは気になった1冊、それが漫画であれ学術書であれ、ページを開いてみてほしい。そこには必ず、あなたのための「晴明」が待っているはずだ。

【付録】2026年版 安倍晴明 必読ブックリスト一覧

カテゴリ

書名

著者

推奨ポイント

主なターゲット

漫画

1. 陰陽師・安倍晴明

川端新 / 結城光流

2024年完結。若き日の苦悩と恋、成長を描く感情揺さぶる傑作。 3

感情移入派・ドラマ好き

漫画

2. 陰陽師

岡野玲子 / 夢枕獏

圧倒的画力と考証。能楽的な静謐さと美しさを備えた古典。 22

芸術派・歴史マニア

小説

3. 陰陽師シリーズ

夢枕獏

すべての原点。晴明と博雅の究極のバディ関係を堪能する。 8

バディもの好き・哲学好き

小説

4. 少年陰陽師

結城光流

孫視点から見る「偉大な祖父」像。一族の年代記として。 9

成長譚・キャラ萌え派

小説

5. 陰陽師・安倍晴明トリビュート

文藝春秋(編)

現代作家たちが競作する、多種多様な晴明像のショーケース。 8

多様な解釈を楽しみたい人

歴史書

6. 平安貴族と陰陽師

繁田信一

公務員としての実像。出世のメカニズムとリアルな日常。 10

ビジネスパーソン・リアリスト

歴史書

7. 陰陽道と平安京

川合章子

都市計画と呪術の関係。京都という空間を再発見する。 12

旅行好き・都市論好き

学術書

8. 平安時代陰陽道史研究

山下克明

国家システムとしての陰陽道を解明する、知の最高峰。 13

本格的な知識を求める人

歴史書

9. 陰陽師たちの日本史

斎藤英喜

「物語」はいかにして創られたか。メタ視点で楽しむ歴史。 15

社会学・民俗学好き

歴史書

10. 陰陽師の日本史

加門七海(監修)

オカルトと歴史の融合。現代に生きる陰陽道を知る。 17

オカルト好き・入門者

引用文献

  1. 元ネタは羽生結弦!『陰陽師0』山崎賢人の“舞”アクション、舞台裏を収めたメイキング映像【2024年4月19日公開】 – YouTube,  https://www.youtube.com/watch?v=MngXx812cnw
  2. 映画『陰陽師0』公式サイト|7月31日(水)デジタル先行配信 9月4日(水)ブルーレイ&DVDリリース,  https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/
  3. 【最終巻】陰陽師・安倍晴明【電子単行本】 9 – マンガ(漫画) 川端新/結城光流(プリンセス・コミックス) – ブックウォーカー,  https://bookwalker.jp/def7a8d07d-29c5-415c-8109-9b806d3ef004/
  4.  https://www.takara-univ.ac.jp/tokyo/news/2024/03/0314news.html#:~:text=%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E5%88%86%E9%87%8E2011%E5%B9%B4%E5%8D%92%E6%A5%AD%E7%94%9F,%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%B4%E6%98%8E%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
  5. 陰陽師・安倍晴明【電子単行本】 1|無料漫画(マンガ)なら …,  https://www.cmoa.jp/title/206597/
  6. 『陰陽師・安倍晴明(4) 4巻』|ネタバレありの感想・レビュー – 読書 …,  https://bookmeter.com/books/18824456?review_filter=netabare
  7. 『陰陽師・安倍晴明(9) 9巻』|感想・レビュー・試し読み – 読書メーター,  https://bookmeter.com/books/22114430
  8. 『妖異幻怪 陰陽師・安倍晴明トリビュート』夢枕獏 蝉谷めぐ実 谷津矢車 上田早夕里 武川佑,  https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167920098
  9. 小説家 結城光流 公式サイト – 新刊、既刊、お仕事についてをお知らせします,  https://yukimitsuru.com/
  10. 平安貴族と陰陽師 : 安倍晴明の歴史民俗学 – 六一書房, https://www.book61.co.jp/book.php/N107222
  11. 繁田信一, 『平安貴族と陰陽師-安倍晴明の歴史民俗学-』, 吉川弘文館, 二〇〇五年, ISBN 4642-07942-4 | NDLサーチ,  https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000025-I008780002809666
  12. 【おすすめ本5選】国立歴史民俗博物館「陰陽師とは何者か-うらない、まじない、こよみをつくる-」がもっと楽しめる! | CUMAGUS,  https://cumagus.jp/articles/vyJnyoR5b_z8HxgbUtarp
  13. 平安時代陰陽道史研究 / 山下 克明【著】 – 紀伊國屋書店ウェブストア,  https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784784217809
  14. 本・コミック: 平安時代陰陽道史研究/山下克明:オンライン書店Honya Club com,  https://www.honyaclub.com/shop/affiliate/itemlist.aspx?isbn=9784784217809
  15. 角川新書 陰陽師たちの日本史 – 紀伊國屋書店,  https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784040824826
  16. 「陰陽師たちの日本史」斎藤英喜 [角川新書] – KADOKAWAオフィシャルサイト,  https://www.kadokawa.co.jp/product/322305000728/
  17. 加門七海 – 陰陽師の日本史 – HMV&BOOKS online, https://www.hmv.co.jp/artist_%E5%8A%A0%E9%96%80%E4%B8%83%E6%B5%B7_000000000267331/item_%E9%99%B0%E9%99%BD%E5%B8%AB%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8F%B2_14743648
  18. 陰陽師の日本史 / 加門 七海【監修】 – 紀伊國屋書店ウェブストア,  https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784299052964
  19. 【簡単解説】陰陽師は何者? 安倍晴明はどんな人物? 能力・術式・式神について,  https://thegate12.com/jp/article/388
  20. 3 – 少年陰陽師 真紅の空を翔けあがれ/結城光流(角川ビーンズ文庫) – カクヨム, https://kakuyomu.jp/works/1177354054883648087/episodes/1177354054883714109
  21. 陰陽師がわかる、おすすめ本13選(2026年) – 良書マップ,  https://book-awesome.com/article/389-onmyoji.html
  22. 岡野玲子 – MELODY[メロディ] | 白泉社,  https://melody-web.com/sakuhin/?id=4

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